二十人の女学生。
幽窓無昔日(ゆうそうれきじつなし)。
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・・・未だにエレベーターが何処にあるのか
(だからスタバは何処にあるのよー?)良く判らない =_=;)
原作は未読です。
9月8日札幌シネマフロンティアにて。
昭和20年8月10日。
帝国陸軍の近衛第一師団の真柴少佐は
小泉東部軍中尉とともに阿南陸軍大臣ら軍トップに呼集され、
マッカーサーからが奪取した900億円(現在の約200兆円)の財宝を、
秘密裡に陸軍工場へ移送し隠匿せよ、という密命を帯びる。
財宝は敗戦を悟った軍の上層部が祖国復興を託した軍資金であった。
真柴と小泉は中国戦線で長く戦った望月曹長と共に極秘任務を遂行。
勤労動員として20名の森脇女学校の生徒が呼集される。
少女たちは御国のためにとそれとは知らぬまま財宝隠しに加担するが、
任務の終わりが見えた頃、真柴に上層部からの命令が通達される。
上映前の予告編を観た時に思ったことが二点ありました。
こういう極秘中の極秘に関わってしまったら、
自分の意思にせよ、そう仕向けられるにせよ、
この子たちは生きていないだろうということ。
ですから冒頭の"追悼の碑"を前にしての久枝の言葉に、
逆に驚いてしまいました。
そしてもう一点は堺雅人の隣は誰?
・・・福士誠治って何回も見ているんですけどねぇ。
最初は震えていただけ。
真柴少佐をサポートしていただけの文官の小泉が
"荷物"を落とした少女たちを怒鳴ったあたりからの変化。
上層部の命令に否と言い、真柴を励まし決断させ、
留守を待つあの夜は彼にとってどれだけ長かったか。
云わばホワイトカラーの彼が銃を撃たなければならなかった時。
19人の少女たちの思い、死を止められなかった責任、
日本の未来を背負ってのマッカーサーとの対峙した彼に、
前半のひ弱さはない。
先にも書きましたが少女たちの死は予想できました。
ただ、ああいう形でとは思わなかった。
『車輪の下』を読んでいたこと、
彼女が軍人の娘であったこともでしょうが、
何よりひとつ年上だったことも大きかったのだと思います。
子どもの一歳の年齢差は大人とは違いますから。
軍人として敬礼していた真柴、
野口や女学生たちにお辞儀される側の真柴が、
銃を手に壕に入る野口に深々と頭を下げる姿が何とも痛々しく。
それだけに梅津参謀総長の紙片の言葉は残酷に感じました。
この任務を命じられた時の望月曹長の反応も
インテリふたりとは違うと思いますし、
真柴たちと野口の交流がもう少し描かれていたらと
物足りない感じが残ります。
後半部では真柴の存在感が薄く(弱く)なってしまいと、
全体に単調になってしまったのが残念です。
全てを語り、花を手向けたことで久枝は"彼女たち"と会うことができた。
久枝の戦争はようやく終わったのではないかと思います。
ところで元ちとせの歌声が流れると思っていたエンディング。
・・・イメージソングだったのですね。
「今、真柴さんと会った。
近衛の制服を着ておられた。
もう命令は守らなくていいそうだ。」
「だからこそこの娘には生きてもらわねばならぬのだ。」
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原作への敬意を感じる、とても丁寧な作りで小説ファンは嬉しい作品でした。
真柴は、小説でも現代の印象がとても少ない描き方になってるんですが、
前半のことがあるから、ちょっと寂しい感じがしますね。
小泉の変化、見た目ほど怖くなかった赤鬼さん、
平和主義者の野口先生。
みんな巧く描かれていたおかげで、お話の本質がよく伝わった気がします。
とても印象的な場面や台詞の多い作品でもありました。
悠雅さんの書かれた原作のレビューを拝読させていただいて、
小説はかなりのボリュームなのでしょうけれど、
やはりかなり脚色されていると感じました。
ただ、とにかく丁寧に作られている映画だと思います。
>真柴は、小説でも現代の印象がとても少ない描き方になってるんですが
涼子がまだ小さい頃、真柴は金原家で剣道を教えていた、
しかも涼子の記憶にない。
現代パートではそれだけだったと思います。
ただ"財宝隠しに関わった人々の群像劇"と言う形ですから、
仕方が無いのかもしれませんね。
>とても印象的な場面や台詞の多い作品でもありました。
そして女学生たちの歌声♪
これが耳に残るのは映像の強みですね。
もう少し演出にメリハリがあったら・・・と惜しまれます。